学校法人の監査報告書が(も)変わります
頭の整理のために、纏めてみました。
「その他の記載内容」に対する監査人の手続の明確化と監査報告書への記載が追加
以前から、監査人は「その他の記載内容」を通読し、未修正の重要な相違がある場合には「その他の事項」区分に記載することは求められていましたが、2022年3月期の監査からは、次の事項が追加、改正されます。
- 監査の過程で得た知識と比較すること
- その他の記載内容における重要な誤りの兆候に注意を払うこと
- 監査報告書の見出しに「その他の記載内容」の独立した区分を常に設け、記載内容に関する報告を行うこと
学校法人の監査における「その他の記載内容」とは?
上場会社であれば、一例として、有価証券報告書の経理の状況より前の部分が該当するので、学校法人の監査では、単純に事業報告書が該当するのかと思っていましたが、実際は違っていました。
「私立学校振興助成法に基づく監査上の取扱い及び監査報告書の文例」(最終改正2021年9月16日)(以下、監査報告書の文例)によると、計算書類として一式で編纂される書類の中にある、監査対象となっていない書類が「その他の記載内容」とされています。
そのため、事業報告書は計算書類と一式で編纂されないため、「その他の記載内容」には該当しないことになります。
計算書類にはいくつかの計算書類、内訳表が記載されていますが、その中で、多くの学校法人の監査で監査対象となっていない書類が、「資金収支内訳表」、「活動区分資金収支計算書」、「事業活動収支内訳表」等です。
この書類が「その他の記載内容」に該当することになります。
この「その他の記載事項」に対しては、これまでも記載内容の検討をしていたかと思いますので、監査報告書への追加記載を除いて、あまり影響はないように思います。
なお、監査報告書にどのように記載するかについては、上記の「監査報告書の文例」を参照してください。
その他の記載内容がない場合は?
幼稚園や認定こども園の監査では、上記の 「資金収支内訳表」、「活動区分資金収支計算書」、「事業活動収支内訳表」 が計算書類にない事例が多いと思います。
その場合は、「その他の記載内容」がないことから、監査報告書に以下の記載をすることになります。
- その他の記載内容が存在しないと判断した旨
- その他の記載内容に対していかなる作業も実施していない旨
具体的には、次の記載が追加されます。
その他の記載内容
その他の記載内容は、監査した計算書類を含む開示書類に含まれる情報のうち、計算書類及びその監査報告書以外の情報である。
私は、その他の記載内容が存在しないと判断したため、その他の記載内容に対するいかなる作業も実施していない。
ここで要注意!
上記で、認定こども園と記載しましたが、認定こども園の監査は法定監査ではなく、任意監査になっています。
この改正は法定監査だけでなく、任意監査も対象になっています(「施設型給付費を受ける幼稚園のみを設置する学校法人等の監査上の留意事項及び監査報告書の文例」(最終改正2021年9月16日))。
法定監査、任意監査に関わらず、特に2022年3月期以降に監査報告書を提出する場合には、最新版のひな型から監査報告書を作ることに留意が必要です。