越田利弥 – 金沢市の公認会計士、税理士

手の届かないところをサポートします

自力で会社設立 実体験 ①

個人事務所を設立後、2年目に突入し、そろそろ新たなことに挑戦してみようと、会社を設立することにしました。
アイキャッチ画像は、株式会社第1号とされる丸屋商社を源流に持つ丸善CHIホールディングス株式会社のシンボルマークです。

まずは、会社設立の手続の概略を理解しようと、解説本を買うことにしました。
Amazonでいろいろ検索して丁寧に情報が記載してありそうなので、『会社設立のしかたがよくわかる本』購入しました(株式会社設立用の本です、合同会社には対応していません)。
ただ、当初、中古本を購入したのですが、あまりにもタバコのニオイがきつく、読むたびに頭が痛くなったのです、泣く泣く新品を改めて購入するはめになりました。

以下、会社設立までの体験談です。

株式会社か合同会社か、社名、決算期をどうする?

合同会社の方が設立費用が安く済み、運営面でも柔軟なようですが、慣れ親しんでいる株式会社を選択しました。

社名については、漢字や英語だとちょっと固いイメージになりそうな気がしたので、ひらがな、カタカナで検討したところ、頭に浮かぶのがひらがなばかりだったので、ひらがなにしました。
会計関連は、人によっては取っ付きにくい面があるため、その難解さを解決し慣れ親しんでもらうことを念頭に「はじめ会計社」とすることにしました。

決算期は、監査業務の繁忙期が一段落して、落ち着いて自分のことを考えられる6月末にすることにしました。

社名が決まれば、次は印鑑

個人事務所の印鑑の作成をお願いしたときに、親身な対応や文字の形の工夫など、納得できる印鑑を作成いただいた塩屋印房さんに引き続きお願いすることにしました。
今回も文字のバランスや体裁の工夫をしていただき、納得の出来上がりとなりました。

定款作成

定款のひな型はネット上にいろいろあるので、それを参考にしたら良いと思います。
私の場合は、ネットのを参考にしつつ、そのひな型から取捨選択をしていったのですが、公認会計士試験で会社法(当時は商法)を勉強したおかげで、定款に記載する事項の意味が分かり、あまり時間をかけず作成できました。

電子定款の作成、認証

定款は書面で作成するものと電子定款の2種類があります。
それぞれ公証役場で公証人の方の認証を受ける必要があるのですが、電子定款だと収入印紙40,000円の貼付が不要となることから、電子定款で認証を受けることにしました。
これだと40,000円ちょっとで済みます。カード払いもOKでした。

公証人の方の認証を受ける前に事前に定款のチェックをしてもらい、認証までのスケジュール確認をしておきました。
その時に、電子定款を作成する時の参考のHPとして、新宿公証役場のケーススタディが参考になると教えてもらいました。
参考にはなったのですが、それだけでは解決できないいくつかのトラブルに見舞われ、ネットで検索したり、問合せをしたりしました。

電子定款で認証を受ける場合、定款に電子署名をするため、マイナンバーカードを持っていることが前提になるので、まずはそのハードルがあります。
マイナンバーカードがあれば、あと揃えないといけないのはカードリーダー(スマホでも代用可能です)、Adobe Acrobatが必要となります。
カードリーダーは以前から持っていたので、Adobe Acrobatの購入費用が別途かかることになりました。

その他、JPKI利用者クライアントソフト(マイナンバーカードの情報を読み取るためのもの)、法務省の登記・供託オンライン申請システムから署名プラグインソフト(Adobe Acrobatで作成した定款に電子署名をするためのもの)と申請用総合ソフト(電子署名を付した電子定款を送信するためのもの)をダウンロードする必要があります。

ここから、Adobe Acrobatで作成した定款に電子署名を付していくことになるのですが、Adobe Acrobatの設定が必要になります。
ここで第1の関門が発生しました。

Adobe Acrobatは無料体験版を利用してダウンロードしたのですが、編集 > 環境設定 > 一般 > 分類「署名」 > 作成と表示方法の環境設定、のデフォルトの署名方法から下記にある、SignedPDFの選択が表示されませんでした。
署名プラグインソフトのインストール方法が悪かったのかもしれないと思い、署名プラグインソフトのアンインストール、再インストールをしましたが、結果は変わりません。
であれば、Adobe Acrobatの無料体験版がいたずらしているのかと考え、Adobe Acrobat Pro DC版の月々プランに変更して、SignedPDFの選択が表示されるかやってみましたが、表示されませんでした。

どうしようもなくなったので、Adobe Acrobatのお問い合わせ窓口(チャット)を利用したのですが、Adobe Acrobat Pro DCの64-bitだと表示できない事例があるとのことで、64-bitをアンインストールして、32-bitのインストールを推奨されました。
この結果、SignedPDFは無事表示されるようになり、解決しました。
無料体験版でも32-bitのものがあれば、できたかもしれませんが、分かりません。

第2の関門は、定款に電子署名を付す時で、下記の署名者情報入力画面に全ての情報を入力して、OKボタンを押した際に発生しました。
Adobe Acrobatがストンと消え去ってしまうのです。
何度やっても同じ現象が起きてしまいます。
Adobe Acrobat Pro DCを有償購入したため、後戻りはできません。Adobe Acrobatのお問い合わせ窓口(チャット)に直行しました。

次の解決法は、編集 > 環境設定 > 一般 > 分類「セキュリティ(拡張)」の「起動時に保護モードを有効にする」と「拡張セキュリティを有効にする」の2つのチェックをはずすとのことでした。
たしかにチェックを外すと電子署名が完了しました。

Adobe Acrobatの電子署名は、何も設定を変えずに署名をすると「赤字の㊞」マークが付されますが、味気ないので、個人印をSnipping Toolで読み込んで、独自の印影を作成しました。
この司法書士の方のHPは、電子署名のやり方を含め、シンプルに解説されていて分かりやすかったです。

次は、申請用総合ソフトで、電子署名した電子定款を送信することになります。
ここで第3の関門が発生しました。送信するに、マイナンバーカードを読み込むで再度電子署名をする必要があるのですが、マイナンバーカードを読み込めません。
ここはAdobe Acrobatのお問い合わせ窓口の対象外のため、Google検索で「申請用総合ソフト マイナンバーカードを読み取れません」で検索すると、検索トップに登記・供託オンライン申請システムの「マイナンバーカードで電子署名を利用する」とあり、解決策が書いてありました。
ツール > オプション > ICカード切替でマイナンバーカードを登録し、カードライブラリの切替で選択せよと。

これで無事に電子定款の送信処理ができましたが、定款に電子署名を付して、電子定款を送信するまで半日もかかる大仕事になってしまいました。
余裕をもって対応してよかったです。

後日の公証役場での電子定款の認証は20分程度で終了しました。
公証人の方からは「個人で電子定款を作成された人は初めてです」と言われました。
金沢では、電子定款の個人利用は進んでいないようです。

つづく